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湿った空気を切り裂く大輪の花火:もうひとつの晩秋の風物詩

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ボンファイア・ナイト

ノリッジで見た「もう一つの秋の風物詩」

11月5日を迎えると思い出す、鮮烈な情景があります。それは今から約40年前、大学卒業後にイギリスの東部に位置するノリッジ(Norwich)で暮らしていた頃のことです。

日本ではまだ晩秋の余韻が残る時期ですが、当時のノリッジはすでに日本の12月頃を思わせる厳しい寒さに包まれていました。

1. 日本とは違う「湿気と霧」の寒さ

日本の冬といえば、澄み切ったカラッとした空気が特徴的ですが、イギリスの冬はまったく対照的でした。しっとりとした湿気を多分に含んだ冷気が街全体を覆い、日常的に深い霧が立ち込めます。

街灯のぼんやりとした光が霧の中にぬっと浮かび上がり、古い石造りの建物が霞んで見える光景は、どこか神秘的で「ヨーロッパの冬」の訪れを肌で感じさせるものでした。そんな底冷えする湿った暗闇の中で、11月5日の夜は一変します。

2. ハロウィン以上に盛り上がる「ガイ・フォークス・ナイト」

先日のブログでも触れましたが、当時のイギリスではハロウィンはどちらかと言えば控えめなイベントでした。現地の人々にとって、この季節の最大の楽しみであり、秋のクライマックスとも言える行事こそが、11月5日の「ガイ・フォークス・ナイト(ガイ・フォークス・デイ / ボンファイア・ナイト)」だったのです。

この祭りは1605年、国王ジェームズ1世の暗殺と議事堂爆破を企てた「火薬陰謀事件」が未遂に終わったことを記念・祝賀する歴史的な風習に由来します。

当日の夜になると、各地で「ボンファイア」と呼ばれる巨大な焚き火が焚かれ、事件の首謀者の一人であるガイ・フォークスを模した人形が炎の中に投入されます。そして、夜空いっぱいにダイナミックな花火が次々と打ち上げられます。

3. 静寂の霧を切り裂く「炎と花火」の熱気

昼間の寒く静かな霧の街から一転、ノリッジの夜空には地響きのような音とともに、色鮮やかな大輪の花火が次々と花開きました。

身体の芯まで冷えるような湿った冷気の中で、赤々と燃え上がる巨大なかがり火の温もりに引き寄せられるように人々が集まり、歓声を上げる――。重く垂れ込めた湿った冬の空気を切り裂くように打ち上がる花火の光と、かがり火の熱気は、寒さを瞬時に忘れさせるほどの迫力と暖かさにあふれていました。

前回のブログで描いた「目張りを貼って悪霊や悪ふざけから家を守るハロウィン」の緊張感とは対照的に、人々が火を囲み、無事に国家が守られた歴史を盛大に祝うこの夜の熱気は、まさにノリッジでの留学生活における屈指の思い出です。

厳しい冬の入口で、人々が火を囲み、夜空を見上げて寒さを吹き飛ばすイギリスの伝統行事。

暗く湿った気候だからこそ、人々が求める「光と暖」のありがたみが際立ち、それが独特のあたたかい文化として今も受け継がれているのだと感じます。