
【連載 第3回】魂のバトン ― 記憶が白く染まるほどの邂逅(かいこう)
「なぜ、私は変われたのか?」
偏差値28から72へ。慶應義塾大学への逆転合格。塾講師となった私は、常にこの問いの「答え」を探していました。自分の体験を、単なる「根性論」や「偶然」で終わらせたくなかったからです。生徒たちに同じ奇跡を起こさせるための、再現性のある「科学」がどうしても必要でした。
そんな切実な思いで彷徨っていた2001年6月。私は運命の一冊に出会います。
衝撃のバイブルとの出会い
書店でふと手にした、百瀬昭次先生の著書『君たちは受験生』。 ページをめくった瞬間、体に電撃が走りました。そこには、私が身をもって体験したこと、そして後輩たちに一番伝えたかったことのすべてが、見事なまでに体系化されていたのです。
「受験期は、人生の黄金期である」
その一言に、私の過去の苦しみすべてが肯定された気がしました。読み終えた瞬間、私は居ても立ってもいられず、気づけば受話器を握っていました。面識も何もない著者の百瀬先生に、溢れる感謝と情熱を直接伝えるために。
「先生、驚かないでください。あの本、もし表紙の著者名が私の名前になっていたとしても、全くおかしくない。それくらい、私の人生そのものが書かれていました。ありがとうございます!」
今思えば、初対面の電話でなんという不遜なことを言ったのかと冷や汗が出ますが、当時はそれほどまでに心が昂ぶっていたのです。
伝説が教室にやってきた日
その情熱が届いたのか、信じられないことが起こりました。著者の百瀬先生ご本人が、板橋の小さな英語塾である「武蔵ゼミナール」へ、生徒たちのために講演に来てくださることになったのです。
実は、私はその日の講演の詳細を、正確には覚えていません。 単なるサイン会のような公の場ではなく、わざわざ、私と教え子たちのために百瀬先生がそこに立ってくださっている。 その事実の重み、そして教室を支配した神聖なまでの熱量に、私の意識はただただ圧倒され、言葉を失うしかなかったからです。 『感激』という言葉さえ陳腐に思えるほどの、魂の震えだけが今も胸に残っています。
ただ、一つだけ鮮明に覚えていることがあります。それは、百瀬先生の言葉が、私の魂に直接「バトン」として手渡されたという、確かな手応えでした。
「塾長、本当だったんだ……!」

講演後の教室は、かつてない熱狂に包まれていました。 「塾長、本当に百瀬先生と知り合いだったの!?」「本物の百瀬先生が目の前にいるなんて!」
驚き、目を輝かせる生徒たち。彼らから寄せられたアンケートには、「人生が変わる予感がする」「初めて受験が楽しみになった」という、魂の叫びが溢れていました。
この日、私の中で一つの覚悟が決まりました。百瀬先生から受け継いだこの「志」を、自分なりの形にして、もっと多くの生徒に届けなければならない。
こうして誕生したのが、英語塾でありながら「勉強法」ではなく「生き方」を説く異例の講座、「受験サクセス特別講座・夢実現セミナー」の誕生でした。(つづく)
※追悼:百瀬創造教育研究所所長 百瀬昭次先生は2014年12月28日、77歳でご自宅で亡くなりました。 教育活動に一生を捧げ、最期まで書くことを貫かれました。心よりご冥福をお祈りいたします。