
第5回:武器は「旧式」ではありませんか? ―AIという「黒船」と、共通テストの残酷な真実
加賀藩前田家が、いつ何があるかわからないという危機感から砂丘を開墾したことは前回触れました。今、私たちの前には、歴史上のどの危機よりも巨大な「黒船」が来航しています。それが「AIの登場」です。
AIは瞬時に翻訳し、要約し、膨大な情報を処理します。この革命的な変化は、社会のあり方だけでなく、当然ながら「入試」のあり方をも根底から変えてしまいました。
AIが変えた「求められる英語力」
目の前に立ちはだかる「共通テスト」。かつてのセンター試験とは、もはや別物です。なぜなら、AI時代には「文法」や「訳読」といった知識の切り売りは無価値であり、問われているのは「膨大な情報から瞬時に本質を抜き出す思考力と処理能力(200wpm以上の読解力)」だからです。
それなのに、多くの生徒たちはどうでしょうか。「文法」と「訳読」という、親の世代には通用したはずの「旧式の武器」だけで、この現代の戦場に挑もうとしています。それはまるで、火縄銃で最新のレーダー網を持つ敵に立ち向かうようなものです。
なぜ、誰も気づかないのか?
保護者の皆様はこう仰います。「私の頃は、このやり方で英語ができた」。教師たちも言います。「これが伝統的な受験英語だ」と。
しかし、その「かつての成功体験」こそが、今の子供たちの可能性を蝕む「毒」になっています。AIという黒船が来航した今、入試は「英語力」そのものを問う、全く異なるゲームに変わりました。この事実に気づかないまま戦うことは、それは、自分から『敗北のレール』を敷くようなものです。
多くの保護者の方は、定期テストで点数が取れている現状を見て『順調だ』と信じておられます。しかし、模試で化けの皮が剥がれるのは、戦場(共通テスト)がその『レール』とは全く別の場所にあるからです。
危機感という名の「開墾」を
今のままでは、どんなに頑張っても「金メッキ」すら剥がれ落ちていくでしょう。砂丘を開墾することなく、砂の上に城を建てようとしているのですから。
私は38年間、この地で英語を見つめてきました。 私が教えているのは、単なる英語の技術ではありません。AI時代の到来と、それに呼応して変わった共通テストという「現代の脅威」に対峙するために、いかにして「直聞&直読直解」の脳へアップデートするか。
前田家のように、生存をかけた知恵を絞りましょう。「今の武器(訳読式)では戦えない」ということに、いち早く気づいた者だけが、この過酷な時代を勝ち抜くことができるのです。(つづく)